新潟市 會津八一記念館

會津八一記念館ブログ『秋艸日記』

2009年5月29日

印象派の話 「セザンヌ以上」

 明日、5月30日より、神林恒道館長の連続講演会「アートの楽しみ 印象派とは何か」がはじまります。たとえ美術に興味がない人でも、モネやルノワールなど、印象派の画家の名前を一人位は挙げる事が出来ると思います。

 ところで、會津八一は、1929年(昭和4)の夏の一時期だけ、近所に住んでいた画家・曾宮一念に指導を受けて、油絵を制作しています。八一は静物画を十数点描き、曾宮一念に「繊細でしかも確に物を把握する明敏さを持っていた」と称賛されていますが、戦災などで失われ、現在は八点の所在が確認されています。會津八一記念館では、2005年(平成17)秋の特別展「會津八一 絵画の世界」で、それらの作品を展示しました。
 八一没後、その油絵を観た杉本健吉は、「中村彝(なかむら・つね)以上、セザンヌ以上」だと絶賛しています。ご存知の通り、ポスト印象派の代表的画家・セザンヌは、生涯を通じて多くの静物画を描きました。また、曾宮一念の友人で画家の中村彝は、セザンヌに影響を受けた作品を残し、八一も高く評価しています。この繋がりを考えると、杉本健吉から二人の名前が出たのも偶然ではないでしょう。
 さて、今回の展覧会では、八一の自画賛の傑作「猫図・枕邉夢去心亦去」(近江家蔵)が展示されています。八一の猫図は、少ない筆で表現する繊細な描写力と明敏な観察眼、画と賛の絶妙な構図で、高い評価を受けています。
 (学芸員・湯浅)
 
「猫図・枕邉夢去心亦去」(近江家蔵)
(枕辺の夢去りまた心去る 醒後夢還れども心還らず)
 
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2009年5月22日

「国宝 阿修羅展」の話

 東京国立博物館で開催中の「国宝阿修羅展」。先日、私も朝イチにもかかわらず40分待ちで、阿修羅像をはじめ奈良・興福寺の名宝を鑑賞してきました。
 興福寺といえば、會津八一は仏像、風景など数首詠んでおり、2007年(平成19)3月には、有志の力によって境内に歌碑が建立されています。また、今回の「国宝阿修羅展」の図録内「阿修羅像を語る、詠む」にも八一の短歌が1首、掲載されています。
 
  けふもまた いくたりたちて なげきけむ 
           あじゆらがまゆの あさきひかげに
  (今日もまた 幾たり立ちて 嘆きけむ 
           阿修羅が眉の 浅き日かげに)
                  『山光集』「西の京」より
 
 争いの神といわれる阿修羅が浮かべる哀愁の表情を、「まゆ」という細部から敏感に読み取った、八一らしい鋭い観察眼がうかがえる名歌です。
 この短歌は、1943年(昭和18)11月、八一が引率した最後の修学旅行の途中に詠まれました。戦争が拡大し、門下生が学徒動員で徴兵された時代、歌中の「なげき」には、この時代を反映した意味が込められている気がします。
 さて、會津八一記念館は5月に入り、中・高・大学生のグループが授業や巡回見学で来館しています。仏像ブームが若者にも及んでいるといわれる昨今。奈良の仏像を愛した八一の書や短歌が、幅広い世代の心に留まることを願っております。
 (学芸員 湯浅)
 

 

 

【写真】4月の取材の風景(上 UX新潟テレビ21 下 新潟日報社)

 

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2009年5月20日

館長連続講座「アートの楽しみー印象派とは何か」募集のお知らせ

 

市會津八一記念館では、館長連続講座「アートの楽しみー印象派とは何か」(前期)を開講いたします。
書や短歌で著名な會津八一は同時に東洋美術史学者であり、その根底にはギリシャ、ローマ時代の芸術への強烈な憧憬があります。講座では、西洋美術への理解を深め、八一の芸術的根源を探ります。講師は、同記念館館長神林恒道氏。平成21年5月より開講いたします。参加希望の方は電話または、往復はがきに講座名・住所・氏名・電話番号をご記入の上、〒951-8101 中央区西船見町5932、同記念館へ5月24日(日)までにお申込み下さい。(1回ごとの参加も可能です。開催日の7日前までに申込下さい。)
 
 
講座名  館長連続講座「アートの楽しみ―印象派とは何か―」
講師   神林恒道 同館館長
会場   クロスパルにいがた(中央公民館) 4階 映像ホール
      (新潟市中央区礎町通3-2086) 
定員   150名(応募多数の場合抽選)  
会期   年4回 5、6、7、8月  
時間   午後3時~4時30分(予定)
参加費  1回 1,000円(4回分一括は3,000円)
 
内容   ①5月30日(土)「印象派の始まり 近代絵画の革命」
      ②6月13日(土)「色彩のリアリズム モネとスーラ」
      ③7月11日(土)「ルノワールと印象派」
      ④8月 8日(土)「〈後期〉印象派とは 
                 セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン」  

2009年5月15日

学規と愛の話

 今回も先日の轡田隆史さんの講演の話から。轡田さんは、「学規」の第一条「ふかくこの生を愛すべし」について、サッカー部の後輩で日本代表の岡田武史監督が考えた「愛の5段階説」(①自己愛②恋愛③家族・友人愛④人類愛⑤地球愛)と比較してお話されていました。その際、「学規」の言葉の中に「愛の5段階」全てが込められている、岡田監督にも教えたい、とおっしゃっていたのが印象的でした。

 愛といえば、NHK大河ドラマ「天地人」の主人公・直江兼続が着用した兜の前立ての「愛」を連想するのは、新潟県民の性(さが)でしょうか。兜の「愛」の解釈については、現在使用される愛の意味ではなく、「愛宕大権現」に由来すると一般的に言われますが、昨年行われた火坂雅志さんとの対談の中で、神林恒道館長は「仁愛」に由来する説の正当性を漢学の知識を交えて論じていました。
 さて、八一の短歌の門下生・吉野秀雄の随筆『学規四箇条』では、「ふかくこの生を愛すべし」を読んで自殺を思い留まった人がいた、と記されています。「学規」にも兼続に通じる「仁愛」が込められていたことがわかる、お薦めの随筆です。
 (神林館長の対談は『実伝 直江兼続』(角川文庫)に、吉野秀雄の『学規四箇条』は秋艸会報誌「秋艸」16号【学規特集】に掲載されています。) (学芸員・湯浅)

記念館受付にも「学規」(複製)が飾られています。

 

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2009年5月 8日

学規とスポーツの話

    

「学規」(會津八一記念館寄託)

 

  記念館では、5月1日にジャーナリスト・轡田隆史さんをお招きし、會津八一の「学規」と現代社会についてご講演いただきました。現在、企画展で「学規」の書を展示していますが、八一は「学規」を門下生と認めた人に渡したことでも知られています。

ところで、轡田さんは早稲田大学サッカー部のMFで大活躍した選手でしたが、八一の門下生にもスポーツマンがいました。有名なのが、日本テニス黎明期の名選手・福田雅之助。プライベートでも薫陶を受けた雅之助は、「学規」に影響を受けて、テニスの信条「庭球規」を記しています。
 
この一球は絶対無二の一球なり されば身心を挙げて一打すべし
この一球一打に技を磨き体力を鍛へ 精神力を養ふべきなり
この一打に今の自己を発揮すべし これを庭球する心といふ
 
「庭球規」は、漫画「エースをねらえ!」で引用され、松岡修造選手が1995年のウィンブルドンのマッチポイントで叫び、ベスト8を決めた言葉としても有名です。八一や「学規」の精神がスポーツの世界でも息づいている、そう思うと嬉しくなります。
今年は、トキめき新潟国体の開催年。スポーツで汗を流した後は、「学規」を観に来てはいかがでしょうか。
(学芸員・湯浅)
 
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2009年5月 1日

神林館長のエッセー集 新刊のお知らせ

神林恒道著『美学つれづれぐさ』

2009年4月26日発行 新潟日報事業社刊

定価(1,400円+税)

 

    半世紀にわたり、美学・美術史研究に携わってきた神林恒道館長(大阪大学名誉教授)のエッセー集『美学つれづれぐさ』がこの4月に、新潟日報事業社から刊行されました。内容は「會津八一先生と美学と」などNHKラジオ・朝の随想(2008年4月から10月)で放送したものから、「美術を嫌いにする教育」、「目で見る音楽の世界」など美学と美術教育や美術史と美術評論に関することまで収録しています。この本書で、日常生活に新たな発見と心が豊かになるでしょう。ぜひ一読下さい。定価1,470円。当記念館でも販売しています。
(学芸員 喜嶋)
 

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